恒例の、最近読んでよかった本をご紹介してみたいと思います。
コロナの影響もあり、外に出歩くよりも自宅で本を読んでウサを晴らす機会が増えました。
いろんな経験を本の中で共有できるので、下手なドラマを見るよりも面白かったりして、テレビを見る時間が大幅に減りました。
そういう意味では、自分にとっては、このコロナも悪いものではありません。
多少、偏っているかもしれませんが、コロナを逆手にとって、読書に励んだ成果をご披露してみたいと思うのです。
「マーケターのように生きろ」 井上大輔 著
マーケターのように生きろ―「あなたが必要だ」と言われ続ける人の思考と行動
2021-02-19T00:00:00.000Z
マーケターとは、一言でいうと、売れる仕組みを考える人、あるいはその仕組みを構築するのに携わっている人のことです。
思い出すのは、NHKのプロフェッショナルという番組にでていたUSJの森岡毅さんというマーケター。
彼の著した「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」は、市場や入場者の捉え方に確率などの数学理論を持ち込んだ非常に理論的で斬新な本でした。P&Gというアメリカの会社がいかに進歩的なマーケティングを展開しているのかが痛いほどわかった好著でした。
なので、本書にも、森岡氏と同じようなマーケターの姿を想像していたのですが。
違っていました。
いや、おそらく根っこの部分ではつながっているのですが、森岡氏が理系だとするなら井上氏は完全な文系という表現がぴったりきます。
井上氏の主張は一言、
「相手からスタートして、相手にとっての価値を見出していくこと」
これこそマーケティングの真髄だというのです。
そして、それは人生にも応用ができて、だからマーケターとしての生き方、という思想を展開しているという
論理としてはちょっと飛躍していると感じる部分もあるのですが、
考え方そのものは非常に面白いです。
そういったマーケターの本質的な部分に興味のある方、マーケティングをイチから考え直してみたい方には、多少風変わりで、考えさせられるこの本はオススメだと思います。
仕事と人生 ラストバンカーの遺言 西川善文
銀行の元頭取ということで、どうせ自慢話だろうと思って読んだのですが、多少趣が違っていました。
どちらかというと仕事論についての記述が多く、非常に考えさせられる内容です。
(もちろん自慢話も多少ありますが)
とくに冒頭にある「仕事ができる人のはなし」はプロが読んでも、ベテランの経営者が読んでもうなずける話でしょう。
本質をとらえ、シンプルに考え、行動できる人。
それが仕事が出来る人。
これがその定義
あれもやる、これもやるでは結局何もできない。頭の中がシンプルに整理されていないと良い仕事はできないのだと。
こんな上司を持ちたかったとつくづく思いました。
この考えにたどり着くまでに、いったいどのくらいの時間が必要なのでしょうか。もっと早くに本書と出会っておけたら僕の人生も変わっていたかもしれません。
西川社長といえば、日本郵政の元社長を務めた人物で、当時、国会でもゆうちょの資産をオリックスグループに二束三文で売り飛ばしたのがけしからんと国会でもかなり話題となり追求されていたのを思い出します。今となっては、彼が判断したことは正しかったのだというのが通説になっていますが。
そのうち、政治圧力で、ゆうちょグループを退任されたのですが、惜しいことをしたものです。彼がゆうちょを率いていたら、今のような押し売り販売で問題になるような堕落したゆうちょグループにはなってなかっただろうにと思えてなりません。
本書は西川氏本人が書き記したのではなく、インタビューした記事を編集部が書き起こしたものだそうです。
なので、ページ数もそう多くなく一日で読めるような内容です。
一流のバンカーの仕事論に興味のあるかたはぜひ。
理不尽に勝つ 平尾誠二 著
平尾誠司さんといえば、ラグビー界で知らぬ人はいないと言うくらい日本ラクビー界で人気のあった人。
彼が亡くなってもう4年が経ちますが、早いものです。
かつて、同志社大から神戸製鋼、日本代表と活躍され、あのスタンドオフの華麗なステップとボールさばき。それは見事で、ラグビーファンとしては彼のプレーを見るのが大好きでした。
日本人であのステップができるのは、新日鉄釜石の元スター選手だった松尾さんくらいしか思い浮かびません。それほど素晴らしいスーパープレイヤーだった。
まあ、そんな選手としての活躍しか知らなかったのですが、たまたま本屋さんで本書を手にとって立ち読みするうち、引き込まれていきました。
脳みそも筋肉でできているような、俗にいう「体育会系」の人間だけには絶対になりたくないと思っていた。P24
一番嫌いな人間は誰か」と聞かれたら、こう答えていたかもしれない。
「星一徹」
また、大学院でも勉強されているようで。
想像とは違う彼の内面に興味を覚え本書を全部読んでみたのです。
なるほど、と考えさせられました。
理不尽ということ。あるいは不条理といっても良い。
こんなエピソードがあります。
高校時代のあるラグビーの試合。試合当日は豪雨にみまわれ、グランドコンディションが悪く、ボールも滑るのでスタンドオフの彼はキック主体のゲームメイクをしようとして、結果勝つことができた。そして、監督もマスコミに平尾のキックが素晴らしかったと褒めたたえてくれたのだが、それを他のメンバーが聞いて不満が爆発した。なんだ、平尾だけの力で勝ったわけではない。なんでや。と。
彼は、その時を回想して、チームが勝つべきためにやったこと。そんなふうに言われる筋合いはない。ベストを尽くすにはそれがベストの選択だったのは明らかなのでショックだった、と述べています。
そう、こういう理不尽はいつでも起こりうるのです。人間社会では理不尽なことは表裏一体、いつ起こってもしかたがないのです。
だから、社会は不条理で満ちていて、理不尽が起きて当然なのだと考え、相手に対応する人間と、そうではなく、理不尽な対応をする相手はけしからん、といって喧嘩してしまい泥縄のような人間関係しか気づけない人間では、将来大きな差が出てくると思うのです。
不条理をどう捉えるか。そういった考えを学ぶには格好の本だと思います。人間として一回り大きくなりたい人必読の書。
マレーシア大富豪の教え 小西 史彦著
YOUTUBEには「バリ島のアニキの教え…」といったような人物がいるようですが、これは全くの別人。
1960年代。マレーシアにたった一人で移住し商社を起業して以降、50以上の多くの関連企業を傘下に収める一大企業グループを築き上げた傑出した人物。
それが著者の小西氏です。
日本ではほとんど聞きませんが、マレーシアでは国王から表彰されたほどの著名人のようで、裸一貫から立ち上がった立志伝中の人物だと言っていいでしょう。
そんな彼がどうやって徒手空拳から築き上げたのか。その心構えから社会の渡り方、起業の考え方について噛み砕いて解説をしてくれます。
こういう書物は時に自慢話で嫌味な内容になることが結構多いのですが、本書は、そういうこともなく、さらっと機知に富むエピソードを添えながら世渡りのコツを示してくれます。
富豪になれるかどうかはともかく。成功した人間の生き様がどのようなものだったのか。どういう点に気をつけているのか興味のある方は、手にとって欲しい本です。
創業家一族 有森 隆著
日本の創業家といえば、パナソニック、トヨタ、イトーヨーカドーや大林組、ソニーなどがありますが、沢山の例をあげ、その企業の歴史と人間関係の対立をこれだけコンパクトに収めた本も珍しい。一時期世界一と言われた日本の大企業がいかに創業家との戦いの歴史だったのかがよく分かる本です。
よく、創業者の後を継ぐ2代目、3代目で会社は潰れると言われますが、実力のないのに、創業者の血を引いているからと、会社のトップに立たれるほど企業として哀れなことはないでしょう。
創業家が踏ん張る限り、どうしてもそのような事態は起こりうるのです。
最近では、例の大塚家具の親と子の激しい指導件争いが話題になりました。
もう少し前には、大王製紙の会長がマカオのカジノで何十億円を会社の金を流用し、大事件になったこともあります。
その両方ともが、会社の歴史とともに、本書にも掲載されています。
つくづく、人間というのは馬鹿な生き物だと思うと同時に、会社経営とはどのように運用したらいいのか、そのヒントも得られる書物です。
会社について考えたいと思われる人にオススメできる本です。一つの会社が雑誌の紙面程度にまとめられているので、興味本位で気軽に読み進められます。
まとめ
いかがでしょうか。
ほとんどがビジネス書なので、仕事とどう取り組むかというのが、メインな本ばかりですが、組織内の対立の話あり、日本の企業神話の歴史あり、今日、紹介した本は、そんな社会を考えるヒントに満ちた本ばかりです。
ほんとはこの3倍、4倍くらいの本を読んでいるのですが、なかなかあたってくれず、結構、こういう良書と出会えるのは珍しいことです。
厳選した5冊
ぜひ、手にとっていただけたらと思います。