こんな本を読んでみた!

【ブックレビュー】才能の無い人が才能のある人といかに戦うか!! 「中野信子著 努力不要論」を読んで考えたこと! 

 

普通ならこんなタイトルの本はスルーしてしまうところです。

努力不要論

今どき、流行りません。

でも、手にとったのは著者の中野信子氏が脳科学者でラジオやテレビでのその鋭い発言でその人柄を知っていたからです。

同時に思い出していたのが、
紳竜の研究 」というビデオ。

島田紳助氏がいまから10年くらい前に吉本興業のNSCというお笑い芸人養成学校で講義をした様子が収められている貴重なビデオです。

https://youtu.be/LucGSmS_AH8

 

紳助は講義の冒頭

こんな話をする。

25年前NSCが出来た時、紳助、さんま、巨人の三人がもちまわり講師として招かれ、30人ほどの生徒に30秒ほどの軽い芸をさせたという。

で、その中で

「いけるのは一組だけやな」

三人が三人ともそう感じたという。
それがダウンタウン。

「全てどんな仕事も才能やねん」

紳助は断言する。
才能のある人間は最初から面白い。才能があるとすぐに分かる。

だから興味があったのは、才能と努力、その関係性。そして向き合いかた。

脳科学者の先生がこのあたりをどう解説されるのか、興味がありました。

 

努力不要論
努力不要論

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フォレスト出版 (2014-11-01)
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こんな内容の本です。

以下、本書から特に僕が興味を持ったところを紹介してみたいと思います。

1,本来の努力とは

ページ: 41
努力というと普通の人は、苦労した分だけ成果が出る、と思い込まされているのではないでしょうか? しかし、「苦労すること=努力」ではないのです。  真の努力というのは本来、成果を出すために必要な①目的を設定する、②戦略を立てる、③実行する、という3段階のプロセスを踏むことです。  どれが間違っていても結果は出ません。

 

非常に秀逸な解説だと思いました。
「努力」、という単純な単語をここまでシンプルで構造化された言葉で言い表したフレーズを僕は知りません。

戦略ってのがキーポイントだと感じたのですが、一体どういう意味なのでしょうか、どう使いこなすのでしょうか、疑問が湧きます。

このフレーズと紳助の「全ては才能やねん」という言葉がクロスして、いろんな思いが浮かんでくるじゃないですか。

 

2,努力は必要である

ページ: 18
人というのは通常、持っている力のすべてを出し切って生きているわけではありません。「本当はここまでできるはず」という最大値の半分、がんばってもせいぜい8割くらいしか力を出していないのです。全力を出し切ってしまうと身体へのダメージが大きいからです。  少し遊びを残しておくのでないと、回復に時間がかかりすぎるのです。その間は外敵・外圧から身を守ることも逃げることもできず、自分を危険な状態に 晒すことになります。

 

このように自立的な防御システムが働くため、

どんなに才能のある人でも、仕事をするには「パワーを出そう」と思わなければ力は出ません。ぼんやりとした状態のまま力を発揮することはないのです。

自分自身、日常で実感しています。

例えば、アイデアを出すのにパソコンの前で唸っていても仕方がない、とかつては思っていました。ですが、実はそうでも無いようです。

散歩したり、シャワーを浴びたり確かにそんな時にアイデアはフッと閃くのですが、あくまでそれはウンウンと唸って紙やパソコンと格闘した後、という前提が付きます。机上で格闘することなしに、都合のいいアイデアなんて生まれるはずがありません。

この文章を読んでから、そうした思いが確証に変わりました。

何かを生み出そうという意思がまずは必要で、そんな努力なしには何も生まれないのです。

3,才能とは視点により評価が変わる

ページ: 20
たとえば今、月に一度のエクササイズも行わない、そもそも走ることが嫌いな人がいたとします。その人は、努力すればウサイン・ボルトのように速く走れるでしょうか?  どう考えても無理ですよね。  科学者らしく誠実な言い方をするにしても、極めて低い可能性しかない、と言わざるを得ません。
途中略
確かに努力すれば、その人の持つ可能性の最大値まではスピードアップできます。けれども、限界を突破してウサイン・ボルトのように優れた記録を残せるほど走れるか、というと、まず不可能です。  そのような意味では、 才能は遺伝的に決まっています。つまり、「努力は報われる」はウソ、ということになります。

 

才能はどこまで伸ばすことができるか?

でも、限界があるという話。

現実の仕事の世界でよく見かけるのが、人嫌いな人が営業に回されてしまうケース。

ITの普及でかなり変わりましたが、多くの日本企業では、営業ができないことには出世ができません。営業ができない=仕事ができない、ほぼ同意義で語られるところが多いです(収益に直結するのである意味当然)。

だから、我慢して営業の仕事を続けることになるのですが、向かない仕事ですからそのままでは成績は伸びない。無駄な努力を重ねる。ノイローゼになる。こんな経路に陥りやすい。

こういう状態にならないためにどうするか。

 

ページ: 160
彼女は「美人ではない」ということを、才能として使ったのです。  自分の容姿が他人にどう映るか、どういう心理の動きをもたらすかということを非常によく知っていて、それを利用し、戦略を立てて目的を達成していきました。  つまり、男性を安心させて、性的な快感と安らぎを与え、複数のパートナーから大きな経済的援助を引き出すことに成功したのです。

 

殺人の刑事事件で死刑が確定した木嶋佳苗被告のことについて著者はこう言っています。決して美人でもない彼女がどうやって男を惑わすことができたのか。

人はモテる=美人=才能 と思いがちなのですが、美人だからモテるわけではありません。

気立ての良さ、ちょっとした女らしい仕草なども男性を誘引できる才能になるわけです。

それに気づいた彼女は戦略的に彼女の武器を使ったのではないか……

面白い仮説です。

でも、事実から考えていくとそれも納得できます。

 

こういう例も

ページ: 162
二枚目やアイドル系の男性は、華やかな存在ですけれども、そのイメージのまま何十年も活躍を続けられるほど、タレントとしての寿命が長いかといわれるとそうでもない。長く生き残っていける人は、数えるほどです。
ー途中略ー
私は俳優の 香川 照 之 さんがとても好きですが、彼は容姿だけが優れている二枚目俳優というタイプとは、一線を画しています。やはりあの演技力と存在感には圧倒されますし、ハッと目が引かれます。  香川さんのような俳優はずっと長く芸能界で活躍されていくのではないでしょうか。一視聴者の立場から申しますと、香川さんが出るだけで画面の重厚さが増すような感じがしますし、物語にもぐっとリアリティが出るように思います。
ー途中略ー
単純に容姿という才能一本だけでやっていく人と、自分の適性をよく知って戦略を立て、行動していく人とでは、やはりずいぶん結果が変わってしまいます。  才能があるかないかというのは、自分が持っている適性を知って、自分の評価軸を確立できているかどうかということに尽きます。  その意味では、才能のない人というのはこの世に存在しません。ただ、自分に何ができるのかがわかっているかいないかの差だけがあるのです。

 

俳優=美男美女 と評価軸を固定してしまいがちですが、実はそうではなくて、自分の持ち味をどう活かして表現していくのかが問われる職業なのだと分かります。

とくに舞台はそうですね。

 

最近、こんな文章を発見しました。

あの、容姿抜群の阿部寛さんでさえ、役者の道を歩むにはこんな試練にあったのです。

https://news.yahoo.co.jp/feature/1065

才能という言葉を固定した捉え方をするとものが見えなくなります。

才能をよく値踏みして、戦略を構築していく能力が必要なのだと学びました。

 

考えたこと

で、戦略とは何か。どう使いこなすのか?
最初の疑問に戻ります。

残念ながら、僕が本書を読んだ限りでは
この肝心の「戦略」の中身は具体的には解説されてないようでした。

著者は
おそらく、それは自分で考えなさい、と言うことだったのでしょう。

なので、そのあたりは、本書に書かれたことと自分の経験から想像するしかないのですが。

こんな方程式を考えました。

 

目的を達成する= 才能☓ 戦略☓ 努力

 

そして、この場合の努力とは、
「コツコツとタスクを実行する」ようなイメージです。

各要素には重点比率が存在して、それは目的により異なります。

漫才師・タレントとして生き残るには
才能70 戦略20 努力10

サラリーマンとして出世するには
才能30 戦略30 努力30

簿記3級に受かるには
才能20 戦略30 努力50 

競争倍率が高い目的ほど、才能の比率が高くなります。そんなイメージを持っています。この方程式にあてはめて仕事を考えていくと、なんとなく戦略が見えてきます。

 

 

戦略的な努力

戦略とは、自分の才能と目標達成に必要な才能とをどう向き合わせるか、ということだと思います。

例えば、こんなことです。

まずは、目標達成に必要な才能やテクニックを考えます。

そして、それぞれの項目に対して、自分がどういうことができるのか。能力の棚卸しをしながら、具体的な手法を考えてみます。

例えば、営業に必要な才能とは以下のようなことでしょうか。

1.顧客とプラスの人間関係を構築できる能力
2.自社の製品を熟知、応用し、顧客に説明する能力
3.自社内を調整する能力
4,目標達成の強い意志力

この一つ一つについて、才能のある人と比較しながら、自分の向き合い方を考える。先の人嫌いの人はその人なりの向き合い方があるはずです。

 

で、結果的に無理だと思うなら、最初から取り組まないことです。

紳助氏も例のビデオの中で言っていました。

「負ける戦いは絶対にしない」

 

まとめ

 

長いことサラリーマン生活をやってきましたが、実は戦略なんてほとんど考えたことがありませんでした。

ただガムシャラに仕事をやってきたように思います。

だからダメなのです。経験上痛いほどそれが分かります。

努力には戦略が必要。
鋭い言葉で、僕の心に突き刺さりました。

本書をおすすめします。

いろんなことを、考えさせる本だと思うからです。

 

 

 

 

努力不要論
努力不要論

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