その昔、「東大生に人気」ということでベストセラーになったのが、外山滋比古先生の書かれた本書、「思考の整理学」という本。
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「斬新なアイデアをどうやったら生み出すことができるのか」
そんなテーマが書かれている。
じつは僕はこの整理術の落第生で、過去、先生の提唱されているやり方を何度となくチャレンジしたのに、三日坊主で終わってしまったという実績を持っています^^;m
最近、Kindle版があるということに気づき、懐かしさと同時に悔しさも反面手伝い、再読してみたのですが、改めて新鮮な気付きを得ることができました。
いい本というのはチューインガムのように噛めば噛むほどなんらかの恩恵を与えてくれるものです。
今日は、このへんのところをレビューしてみたいと思います。
ハッとなった3つの要素
この本を最初に読んだのはもう10年以上前の話。
それから、いろんな思考法の本を読みましたが、その中でも群を抜いて本書が強く印象に残っているのは、「発酵」という独特の概念があるから。
その考え方が面白く、ユニークで惹きつけられるのです。
しかし、やるは難しで、僕の考えるところ3つのポイントを押さえておかないとうまくいかないようです。
1,発酵する
思考を整理する方法として先生が提示されているのは以下の方法。
1,ひとつの手帳なり、ノートを用意する。
そして、考えが浮かんだらそこにその要約をメモする。記録をとっておく。
2,しばらく時間を置き寝かせたらそれを見返して、コレはと響くものだけを別のノートに
転記してやる。
3,また寝かしてやって時間が立ったら見返してみる。
そして、再度心の中に響くフレーズがあれば、またそれを別の(上位の)ノートに
転記してやる。
こうやって時を経て淘汰されたデータや言葉だけが生き残り、その言葉の群れがノートの中で交配し、発酵してきて初めて、斬新なアイデアが出て来るというやり方です。
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この手帖の中で、アイディアは小休止をする。しばらく寝させておくのである。ある程度時間のたったところで、これを見返してやる。すると、あれほど気負って名案だと思って書いたものが、朝陽を浴びたホタルの光のように見えることがある。 つまり、寝させている間に、息絶えてしまったのである
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見返して、やはり、これはおもしろいというものは脈がある。そのままにしておかないで、別のところでもうすこし寝心地をよくしてやる。 別のノートを準備する。手帖の中でひと眠りしたアイディアで、まだ脈のあるものをこのノートへ移してやる。
発酵という作業を艶のある言葉で表現されています。また、こんなことも書いてある。
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頭の中の酒をつくるには、どうするか、については、すでにのべた。そこから生れるものが、自分の思考であって、まざりものがない。すくなくとも、他からの混入のあとは残っていない。独創である
面白い。
以前ここでも紹介した「エッセンシャル思考」に”大半のものはノイズである”という言葉がありましたが、同じことを言われていると思います。
僕らが考えたり思ったりしたアイデアや情報のほとんどは役に立たず時間の経過とともに腐ってしまう。そのゴミの山からどうやって宝を取り出すのか。
どうやったら有意義な情報を手に入れることができるのか、
その手法がアルコールの発酵の概念からこんこんと説かれているのが参考になります。
2,転記することに意義がある
今回猛省した点がここ。
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メモの手帖から、ノートへ移すことは、まさに移植である。そのまま移しているようであっても、決してそうではない。多少はかならず変形している。
それよりも、もとの前後関係から外すことが何より、新しい前後関係、コンテクストをつくり、その中へ入れることになる。
コンテクストが変われば、意味は多少とも変化する。手帖の中にあったアイディアをノートへ移してやると、それだけで新しい意味をおびるようになる。もとのまわりのものから切れ離されると、それまでとは違った色に見えるかもしれない
転記という作業、これを僕はずっと軽視してきました。
非効率じゃないですか。写経じゃあるまいし、このIT全盛の時代に一旦文章にしたものを再度ペンを持ってノートに書き写すなんて、無駄でしょ。
先生の考えられたこのノート術をマネてもうまくいかないのは、恐らく、この「転記」という作業を軽視していたからにほかなりません。
切り貼りでやり過ごしてはその効果は格段に落ちてしまうのです。だから続かない。
”書き写す”といういっけん無駄に見える行為が発酵には大事な作業だったのだと、今回再読して改めて理解しました。
そもそもが「発酵させる」という非常にアナログティックなやり方を実践しているわけですから、非効率で当然なのです。効率化を前提に考えると、このやり方は必ず頓挫します。
3,リサーチが必要
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まず、テーマに関連のある参考文献を集める。集められるだけ集まるまで読み始めないでおく。
これだけしかない、というところまで資料が集まったら、これを机の脇に積み上げる。 これを片端から読んで行くのである。よけいなことをしていては読み終えることができない。メモ程度のことは書いても、ノートやカードはとらない。
当たり前の話です。
何かを考える、何かを文章としてアウトプットする際にリサーチ(調査)が必要なのは言うまでもありません。
何の調査もせずにいきなり論文(文章)を書き始めるなんてのは愚の骨頂。NGです。
でも、凡人はほんの僅かのリサーチでわかったつもりになって、閃いたわずかなアイデアを使ってアウトプットしようとする。
だから心に響く文章が書けない、アウトプットが貧弱になる。
引用したやり方を筆者は「積読(つんどく)」と言っています。関連するデータを四方八方かき集め、それを一心不乱に読み進む。頭の中の黒板に書きなぐる。
読み終えた後で印象に残って重要と思ったことだけをメモする。発酵させる。
リサーチは徹底的にやる必要があります。
まとめ
ということで、まとめるとこの思考の整理学で説明しているやり方を実行しようと思ったらちょっとした「一手間」が大事だということです。
無駄だと思っても「とにかくやる」くらいの覚悟が必要なようです。
野口先生の書いた「超発想法」と双璧をなすほど、完成度の高い本だと思います。未読の方はぜひ、目を通してみてください。
僕はさっそく外山先生のノート術の再チャレンジをはじめました。さてさて、この先どうなるやら。
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