あのカリスマブロガーとして有名なちきりんさんの著作を読んでみました。
題名は「マーケット感覚を身につけよう!」
以前から気になっていた本です。
社会派と言われる彼女の分析眼にかかるとマーケット論はどう変貌するんでしょうか?
そんな興味から手に取りました。
どんな本?
マーケット感覚を鍛え、「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法。
①プライシング能力を身につける
②インセンティブシステムを理解する
③市場に評価される方法を学ぶ④失敗と成功の関係を理解する
⑤市場性の高い環境に身をおく<書籍カバーより>
このフレーズでだいたいのことはわかりますよね。
「何が売れるのか?」「何がいまから流行しそうなのか」
これが分からないとこれからの時代を乗り切ることができません。
そして、逆に「世の中の市場の変化を読み間違えると、大変なことになりますよ……」
って警鐘をならしているのが本書です。
市場って何?価値って何?
これがキーワード。
マーケット感覚とは
そもそも著者の言うマーケット感覚って何なんでしょうか?
どんな分野であれ10年も働いたら、「自分には売れるモノなど何もない」なんてことはありえません。もしそう感じるとしたら、その人に足らないのは「価値ある能力」ではなく、「価値ある能力に、気づく能力」です。価値を価値として認識する能力を欠いたままでは、いくら大量の金塊を手に入れても、不安が消える日は永久にやってこないでしょう。
(はじめにより)
そして、こんなくだりもある。
この両者の違いがまさに「売れるものに気がつく能力」であり、「価値を認識する能力」の差です。
本書ではこの能力を、「マーケット感覚」と命名しています。(はじめにより)
つまり、人が気づかない価値に気づく能力。それがマーケット感覚ということのようです。
ネットが普及し、ものごとの価値が変化してしまっています。
ニュースは無料でネットで見れるし、テレビに変わってYOUTUBEのコンテンツが流行って楽しむ人が増えてきている。しかも、それは無料。
ニュースという価値。娯楽という価値が無料に近づいている。大きく変化しているわけです。
昔の頭で考えたら無料でこんな面白いコンテンツが見れるなんてありえない。でも、そのあり得ない時代に直面しているのが現代なんですよ。
価値は大きく変わりました。そのことをよーく認識してものごとを考える必要がありそうです。
思考は2つ
実は世の中の大半の問題は、一つの手法を使って考え続けるより、論理的な思考とマーケット感覚という、2つのアプローチで両側から考えたほうが、圧倒的に早く、現実的で豊かな解に到達できます。
P11
論理思考とマーケット感覚を同等の土俵に上げること自体に僕は違和感を感じますが、
ここは「”市場”という概念で捉えてみること」と置き換えてみて合点がいきました。
普通の論理思考に市場という視点を持ち込む。
市場というのはある意味、どろくさい現場からものごとを見ること、あるいはネットというチャネルを通してものごとを捉えることですから、机上の空論となるのを防止する効果があるのかもしれません。
面白いと思ったのは
やはり、興味深かったのは彼女が事例として上げているたくさんのこと。
実は日本を含めた先進国でも、客の価値基準に応じ、同じ商品を異なる価格で売っているマーケット感覚にあふれた企業や店はたくさんあるということを、理解しておきましょう。
1番シンプルなのは、スタンプカードを作らせ、10個買ったら1個が無料になるといった割引方法です。昔なら、常連さんの顔を覚えていたの、今はスタンプカードによって常連客を判別しているわけです。しかもスタンプカードなら「そんな面倒なものは持ち歩きたくない」という常連客には、割引をする必要がありません。結果として価格に敏感な常連客にのみ、他の客に売るときとは異なる割引価格で売ることができます。
P160
これなんかは顧客をどう切り分けるのか非常にためになる話だし。
ここで売られているのは、おばあちゃんたちが山から集めてきた葉っぱです。日本の地方であれば、どこにでもある里山の葉っぱ。それが、二億円を超えるビジネスに成長しました。 これこそまさに市場創造ですよね。日本中に存在する「山しかない町」と、「山とマーケット感覚のある町」の大きな違いが分かります。
p254
山にある紅葉の葉っぱを売って商売するという話は、テレビでも放送していたので知ってはいましたが、やはり、ちきりんさんが解説するとまたちょっと違った味わいが出て来る。
今、アメリカでは、野球などスポーツ番組の放映権が高騰しています。理由は、それ以外のコンテンツの多くが、録画して(もしくはオンデマンドで後から)視聴されるようになったからです。そういった視聴方法では、コマーシャルはスキップされ、消費者に届きません。 このため、リアルタイムで見てもらえるスポーツコンテンツの価格だけが、高止まりしているのです。
P107
この解説も面白い。
内容はアメリカのテレビ事情とはなっていますが、今の日本のテレビ界の現状も似たり寄ったりですから、透けて見えてきますよね。
このようないろんな事例に当たることで、市場とはなにか、価値観がどう変わってきているのかを理解することができるのです。
最後に
結局、思ったのは自分の価値観の囚人になるな、ということ。
例えば、この間レンタルで観た「シン・ゴジラ」という映画。僕の評価はさんざんでしたが、雑誌などをめくると結構賞賛されている方も多い。
また、僕のようにパソコンやスマホ、タブレットなどのガジェット好きな人もいれば、そうでない、全く興味のない人も多い。
ま、それが趣味の範疇で終わるものであれば、良いのですが、もし、仕事に関連しているとすれば、見捨ててはおけません。
嫌いなものでも、興味がなくてもどっぷりハマって研究するくらいの姿勢でなければなりませんよね。
本書を読んで強く思ったのは、そういうことでした。
価値ってほんと人により違うのです。気づかない価値があると考えるだけでも恐ろしくなりました。